渓流の宿 渓山(芦ノ牧温泉:福島県会津若松市)|眼下に渓谷が迫る!馬レバ刺しが美味い、源泉かけ流し絶景宿

いしい馬刺しを食べたい。醤油をちょっとだけつけて、ニンニクと刻み生姜を乗せて、延々と口の中で噛みほぐしたい。そして、馬刺しを食べた後は、源泉かけ流し温泉にゆっくりと浸かりたい。馬刺しといえば熊本だけど、福島の馬刺しも美味しいよね。そうだ、せっかくなら翌朝チェックアウト後に喜多方ラーメンも食べたい!

 そんな流れから向かうことになったのが、福島県会津若松市にある芦ノ牧温泉です。江戸時代に宿場町として栄えた大内宿(おおうちじゅく)から車で15分ほどの場所にある同温泉は、開湯から1200年以上の歴史があると言われており、仏教僧・行基が全国行脚中に発見したという伝説が残っています(諸説があり、弘法大師によって発見されたとする説もあります)。

 今回は、そんな芦ノ牧温泉にある源泉かけ流し100%宿「渓流の宿 渓山(けいざん)」への宿泊記録になります。写真にある通り、見事なロケーションの貸切檜露天風呂に圧倒されました。

※本記事は訪問日(2023年9月18日)時点の情報です

渓流の宿 渓山へのアクセス

 会津若松の市街地から国道118号(121号上)を阿賀川(この地域では「大川」と呼ばれて親しまれている)沿いに南下すること約30分。芦ノ牧トンネルの手前を右折した先に広がる芦ノ牧温泉街の一角に、今回お世話になったお宿・渓山があります。公共交通機関を使う場合は、JR磐越西線「会津若松駅」から会津バス「芦の牧車庫」行きに乗車して40〜50分程、終点で降りてすぐです。

 ちなみに、会津鉄道会津線には「芦ノ牧温泉駅」という駅もありますが、こちらは温泉街から少し離れた場所にあります。車で10分ほどなので、荷物を持って歩いていくには厳しい距離かと思います。

国道118号を南下していくと、芦ノ牧トンネルの手前で「芦ノ牧温泉」の大きな看板が出迎えてくれる
いい感じに鄙びた温泉街の通り

 ちなみに、最寄の芦ノ牧温泉駅は、2008年の初代「ばす」、2015年の2代目「らぶ」、2023年の3代目「さくら」と続く人気の「ねこの名誉駅長」で全国的に知られる駅です。2代目の「らぶ」が2022年10月に亡くなっていたことから、僕がこの地を訪問した時点で名誉駅長は不在でした。この後、2023年11月に妹の「さくら」が3代目名誉駅長に就任しており、また2026年7月には、マンチカンの雄猫2匹(「そら」と「りく」)が「駅員見習い」としてデビューしています。

当時、芦ノ牧温泉観光協会の前に飾られていた「らぶ」名誉駅長のパネルイラスト

外観&ロビー

 渓山は、その名の通り大川の渓流を見下ろす立地に建つ、こぢんまりとしたお宿です。白壁の和風建築が、背後の山々の緑に映えます。

渓山の外観。駐車場は宿の目の前にある
どっしりとした瓦屋根の玄関。歓迎看板に自分の名前があるのが、なんだか嬉しい。日本の古き良き旅館ならではのおもてなしと感じる

 中に入ると、赤い絨毯が敷かれたレトロな雰囲気のロビーが広がっています。フロント周りには観光パンフレットやフィギュアなどが置かれ、アットホームな空気が漂います。

赤絨毯が印象的なフロントロビー
フロントに並ぶ『鬼滅の刃』のフィギュアと会津若松の観光マップ
ロビーの休憩スペース
館内には鳳凰などが描かれた大きな絵が飾られている
磨き込まれてピカピカの廊下。清掃が行き届いている

お部屋

 渓山の客室は全8室。いずれも窓の向こうに大川の渓谷を望む和室で、うち2室は源泉かけ流しの風呂付き「特別室」(部屋名は「渓山」と「渓雲」)となっています。今回はその特別室に宿泊しました。

床の間と自然木の柱が趣深い和室
入り口側から見た室内の様子。向かって左側に源泉かけ流しの部屋風呂がある
広縁にはソファが置かれており、渓谷を眺めながらゆったり過ごせる
部屋からの眺め。眼下に大川の渓流が流れる。奥に見える大きな建物は、『鬼滅の刃』の「無限城」にそっくりだと話題の吹き抜けロビーが魅力の老舗温泉旅館「大川荘」
特別室の醍醐味である源泉かけ流しの部屋風呂(詳細は後述)

お食事

 渓山のお料理は、自家栽培の会津コシヒカリ100%のご飯と無農薬野菜を使った、手作りの家庭的な会席が特徴です。お食事は広々とした食事処の大部屋でいただきました。

夕食

会津名物の馬刺しをはじめとする郷土色豊かなお膳
川魚の塩焼きと、ヤングコーンやミニトマトが入った涼しげな先付
別注の馬のレバ刺し。全く臭みがなく、非常に美味だった
ご当地牛である福島牛。野菜と一緒に陶板で蒸し焼きにしていただく
締めのお蕎麦
日本酒の飲み比べセット(純米酒・にごり・純米吟醸)。とにかく馬刺しやレバ刺しと合う

朝食

夕食と同じ会場で朝食をいただく
朝食は焼き魚と卵焼きを中心とした和食膳

温泉

 渓山のお風呂は、男女別の内風呂と、貸切利用できる2つの露天風呂(岩露天風呂「豊月の湯」・檜露天風呂「朝霧の湯」)、そして風呂付き客室の部屋風呂という構成です。特筆すべきは貸切露天風呂の運用で、空いてさえいれば24時間、無料で何度でも利用できるという、温泉好きにはたまらない仕組みになっています。

 泉質は「カルシウム・ナトリウムー硫酸塩・塩化物温泉(硫酸塩泉)」で、源泉名は「芦ノ牧温泉総合泉」。芦ノ牧温泉では地域が源泉資源を集中管理しており、そこから各お宿へと供給しています(ただし、温泉街から離れた国登録有形文化財の宿・仙峡閣だけは自家源泉を持っています)。泉温は58.8℃で相当熱く、加温や循環を一切していない、ピュアな源泉を楽しむことができます。

部屋風呂(特別室)

 まずは部屋風呂から。窓際に木の湯船が据えられており、渓谷を眺めながら、好きなタイミングで源泉かけ流しのお湯に浸かることができます。無色透明で、微かに硫化水素臭(ゆで卵臭)がします。じんわりと身体に侵入してくるようなお湯です。

窓の外に渓谷が広がる部屋風呂。水流の音を聞きながら源泉に浸かれるという、なんとも贅沢な時間を堪能できる
シャワー付きの洗い場も完備されている
湯船からの眺め。湯気で曇った窓の向こうに山々が迫る。秋は紅葉を、冬は一面の雪景色を楽しむことができそうだ

貸切岩露天風呂「豊月の湯」

 続いては、貸切岩露天風呂「豊月の湯」へ。ロビー脇から一度外に出て(ドア脇にサンダルが用意されています)、庭の小道を進んだ先にあります。大きな岩をふんだんに配した湯船で、湯面に落ちる木々の葉陰、そして四方から聞こえる虫の音や川のせせらぎが非常に心地よい空間でした。

ロビー奥にある露天風呂への入り口。海外からの宿泊客向けに英語の案内板も掲示されている
石畳の小道の先に見えてくる豊月の湯の湯小屋
大小の岩に囲まれた豊月の湯。底には玉石が敷き詰められている
浴場に掲示された「正しい温泉利用法」。館内に一般的な温泉分析表が見当たらなかったため、こちらの掲示がそれを兼ねているようだ
湯船からは対岸の山の緑が目に飛び込んでくる
脱衣スペースと露天のシャワー。ボディーソープ類も用意されている

貸切檜露天風呂「朝霧の湯」

 そしてもう一つの貸切露天風呂が、メイン写真にも据えた檜露天風呂「朝霧の湯」です。屋根付きの階段通路を下った先、大川の渓流を見下ろす崖の中腹に檜の湯船が据えられており、そのロケーションはまさに絶景の一言。ホームページによると、夜には零れ落ちそうな星空が広がり、時折流れ星も見られるのだとか。僕は今回は部屋風呂に入り浸っていたため、こちらの朝霧の湯は朝食後に一回だけ入りました。次回来た時は、ぜひ、夜の時間も楽しみたいと思います。

朝霧の湯へは屋根付きの階段通路を下っていく
湯船へと向かう途中にあるシャワースペース
朝霧の湯にも「正しい温泉利用法」が掲示されている。内容は「豊月の湯」のものと同じ
階段上から見下ろす朝霧の湯。眼下には大川の渓流が広がる
湯船からの眺め。対岸に手が届きそうな距離感で渓谷美を味わえる。部屋以上に渓谷の水流音を楽しむことができる
檜の湯船に源泉を注ぐ湯口
入浴中にトンボが遊びに来てくれた

周辺環境

丸峰観光ホテルの入り口

 芦ノ牧温泉の周辺には、江戸時代の宿場町の景観が残る「大内宿(おおうちじゅく)」(車で15分ほど)や、国の天然記念物に指定された景勝地・塔のへつり、先述の猫の名誉駅長で知られる芦ノ牧温泉駅など、見どころが点在しています。また同じ温泉街には、アニメ『鬼滅の刃』の「無限城」に似ていると話題になった旅館・大川荘や、老舗の大型温泉旅館である丸峰観光ホテルなどもあります。フロントに鬼滅のフィギュアが置かれていたのは、その縁もあるのかもしれません。

 今回、渓山をチェックアウトした後に大内宿に立ち寄ったので、その時の様子で締めたいと思います。

江戸時代における会津西街道の「半農半宿」の宿場だった大内宿。田園の中の旧街道沿いに、茅葺き民家の街割りが整然と並んでいる
伝統的な茅葺き屋根の蕎麦屋さん
大内宿の名物「高遠(たかとお)そば」。そばを箸がわりの長ねぎ一本で食べることから、別名「ねぎそば」とも呼ばれている
冬の大内宿の景色

おわりに

  

 全客室から大川の渓谷を望み、2つの絶景貸切露天風呂を24時間好きなだけ楽しめる渓流の宿 渓山。源泉かけ流しのお湯と渓谷美、そして会津の食が揃った、大満足のお宿でした。

 ちなみに、この時は家族で宿泊したのですが、帰りがけに『鬼滅の刃』の人気キャラクターの一人である蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょうしのぶ)のぬいぐるみをプレゼントでいただきました。娘は大喜び。渓山の女将さん、改めましてありがとうございました!今でも大事にしています。

  

 いやぁ、温泉って本当にいいもんですね~♨︎

文:ナガオカタケシ